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東京高等裁判所 平成2年(ネ)435号 判決

三 当裁判所も控訴人の被控訴人らに対する本訴請求はいずれも理由がなく、これを棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に付加訂正するほか原判決の理由の説示と同じであるから、これを引用する。

1 原判決二三丁表三行目ないし二四丁裏一行目を次のとおり改める。

「前掲甲第二号証によれば、右の係止突片が構成要件(6)で規定された「軸線に垂直な環状係止面」と協働して封緘具としての係止機能を発揮する態様について、本件明細書に「係止突片9は後述のように、結合部3を頭部1内に係止する場合に環状固定歯6の環状係止面7aまたは7bと衝合して支持され、それにより係止を行うためのもの」であり(本件公報四欄二四行目ないし二七行目)、「係止突片9は弾性的に第3図のように遊離状態に復元してその後端が第6図と第7図に示すように固定歯6の係止面7aと衝合して支持され」るものであること(五欄三四行目ないし三七行目)、更に「係止時に結合部3を挿通方向とは逆方向(たとえば第6図のA方向)に力が加えられると、係止突片9は第6図のようにその後端が係止面7aと接触した状態でその力に抵抗し、封緘具の通常の使用時に加えられる力に対しては第6図の状態のままで十分に耐えることができる。たとえ通常の力よりも相当大きい引張力が封緘具に加わつた場合でも、係止突片9は第8図に示すように弾性的に僅かに湾曲するだけでその力に抵抗できる。また、仮に特別大きい引張力が封緘具に加わつたとしても、係止突片9は第9図に示すようにほゞ直線状になるまでその拡大部8との接続端付近で屈曲して係止面7aと面接触する状態でこの引張力に耐えることができ」る(五欄末行ないし六欄一三行目)ものであると説明されていることが認められることからも、構成要件(6)に規定された「軸線に垂直な二つの環状係止面」は、係止突片と協働して前記認定のような係止態様を実現するための軸線に垂直な係止面として予定されたものと解することができ、このように理解することに十分な技術的意義があることも明らかである。したがつて、構成要件(6)にいう「軸線に垂直な二つの環状係止面」とは第6図ないし第9図の7aとして示された軸線に垂直な係止面をいうものと解される。ところで、前掲甲第二号証によれば、本件明細書には、本件発明の第二の実施例として環状突起部7d 7eをもつ封緘具が第10図ないし第14図に示されていることが認められるが、昭和五六年八月一四日付手続補正書による補正によつて構成要件(6)のように「軸線に垂直な二つの環状係止面」と特定された後においても、このような環状突起部7d 7eをもつ構成が本件発明の実施例として残り得るかについて検討するに、本件明細書に「係止突片9aの遊端(後端)が環状突起部7dを通過する際には、その環状突起部7dは薄いものであるので、係止突片9aはその弾性拡開力により該環状突起部7dを押し広げるようにして弾性的に拡開し、その遊端(後端)は第14図に示すように環状壁4の内壁面と係止面7aと環状突起部7dとの間にはさまれるようにはまり込み、確実に位置決めされる。」(本件公報七欄二三行ないし三一行)と記載されていることから明らかなように環状突起部7d 7eは極めて薄く、かつ弾性拡開力のある部分であるから、ここには引張力に抵抗する力を期待できず、係止突片も軸線に垂直な部分である係止面7aによつて支持され、この係止面7aと係止突片とが協働して封緘具しての係止機能を奏するものと理解できる。つまり、軸線に垂直な係止面7aが係止突片と協働して係止機能を奏するものと理解してはじめて本件発明の実施例として認め得る余地があるものである。

2 原判決二五丁表一行目ないし二六丁表六行目を次のとおり改める。

「及び弁論全趣旨により被控訴人製品の係止面の拡大写真であることが認められる乙第二〇号証の一ないし九によれば、これらの写真の被写体である多数の製品のうちには、被控訴人が別紙目録甲として主張するところの環状係止面(控訴人の主張する環状係止面の傾斜した部分)と挿通孔5の内壁によつて挟まれた部分(以下「挟間底部」ともいう。)がほぼU字状の溝を形成しているもののほか、直線を形成し挿通孔の軸線に垂直になつているとみられるものが散見されることが認められる。これらの製品のうち、挟間底部がU字状の溝を形成しているものは、本件発明の技術的範囲に属さないことは明らかであるが、挟間底部が直線を形成しているものについても、環状係止面(傾斜した部分)と挟間底部との相対的な大きさなどが一律ではなく、次に認定説示するとおり控訴人が主張するように別紙目録(一)として特定することはできない。すなわち、被控訴人製品のうち、二方向の挟間底部のいずれもが少なくとも軸線に垂直な面となつているとみられる余地のあるものについて、環状係止面(傾斜した部分)と挟間底部との相対的な関係をみるに、前掲甲第三号証の三、四、第四号証の一、第一一号証の一ないし三、五、七、八、九、一〇、一三ないし一五、二〇、二七、三四、三六、四〇、四二、四八、五二、五六、六一、六三、六五、六七及び乙第二〇号証の五によれば、環状係止面(傾斜した部分)は挟間底部に比して相対的に大きく形成されていて、挟間底部は総じて極めて狭く、深いところに位置していることが認められるうえに、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める乙第二二号証の一及びこれにより被控訴人デニソンが販売する製品の拡大写真であることが認められる同号証の二ないし一一を総合すると、被控訴人製品における係止突片は極めて大きく、かつ長いものであつて、垂直な係止面との接触を予定したものではなく、ましてやこの挟間底部が係止突片を全面的に圧着させる部分として期待されているとは到底認められない(大きな引張力が働いても傾斜した部分が変形しない限り係止突片が挟間底部に圧着されることはない。)からである。

株式会社日本バノツク技術開発部主任峯岸康行作成の報告書(甲第八号証)には、任意抜き取り選択した被控訴人製品一〇〇本のうち八六本が二方向の前記挟間底部のいずれもが軸線に垂直な面を有するものであつた旨の記述があるが、前掲甲号各証及び乙号各証にみられる被控訴人製品の結合部の断面写真を精査しても、挟間底部の面の形状はまちまちであつて右報告書添付の第1図に示された挟間底部の面のように一律に垂直な形状のものとは到底認められず、他に右の記述を客観的に裏付ける証拠は見い出せないから、前掲甲第八号証は、右の認定を左右し得るものとはいえない。

右認定のような環状係止面(傾斜した部分)と挟間底部との関係及び係止突片の形状ないし大きさを勘案すると、たとい、被控訴人製品のうちの挟間底部が少なくとも軸線に垂直な面となつているとみられる余地のあるものについても、挟間底部が係止突片と協働して係止機能を奏する部分と認めることはできない。むしろ、前記のような環状係止面(傾斜した部分)と係止突片との構成上の関連からしても、係止突片は環状係止面(傾斜した部分)と挿通孔5の内壁によつて支持され、引張力に抗する力も係止突片とこの環状係止面(傾斜した部分)及び右内壁との協働した作用として生じるものとみるのが自然である。右の認定判断を左右するに足る証拠はない。」

そうすると、被控訴人製品のうちに、挟間底部が少なくとも軸線に垂直な面となつているとみられる余地のあるものがあるとしても、被控訴人らにおいて、別紙目録(一)記載のような、係止突片と協働して係止作用を奏する部分としての環状係止面7a 7bを有する製品を輸入、販売していた事実を認める証拠とはなり得ず、他に右の事実を認めるに足る証拠はない。

3 原判決二六丁表七行目ないし九行目の3の冒頭から「当事者間に争いがない。」までを次のとおり改める。

「別紙目録(二)記載の封緘具について、被控訴人デニソンが輸入、販売し、被控訴人アドバンスが販売していることは当事者間に争いがない。」

四 そうすると、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であつて控訴人の本件控訴は理由がないのでこれを棄却する。

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